「サディマ! 急患だ!」

 服を台無しにされた怒りに身を震わせて睨み付ければ。

 見知った青年が少女の身体を抱え部屋に飛び込んでくるところ。

「なんなんだい! 一体!」

「急患だって云っている!」

 怒鳴るサディマを無視して――と云うよりも聴こえない勢いで。

 青年は、腕のなかでぐったり脱力した少女を、押し付けてくる。

 長い髪に縁取られた顔は、サディマにも縁深いものだった。