背後でラザーが動く気配。

 迷う余裕がなかったことが、シェイスの身体を動かした。

 床に落ちていたラザーの小剣を掴み、窓の外に身を躍らせる。

 一瞬の浮遊感。

 そして、下へ引き摺り落とそうとする重力。

 抗いに、シェイスは手にした刃を壁に突き立てた。

 刃で石壁を削り、勢いを殺しながら転がるように落ちていく。

 地面に激突する間際にアギの手がシェイスの弛緩した身体を引き受ける。

 ふたり縺れ、引き摺られるように、走り出す。