「今日は、珍しいものを見る日だ。

 お前が揺らぐ姿など、見たのは……片手ほどか」

 前に見たのはいつのことか、と記憶を辿り、インシアが僅かに眉を潜める。

 苦しいからではない。

 苦いからだけではない。

 行き場がないからこそ、辿りたくもない記憶。

 それは、黒でも白でもない、インシアの髪や眸と同じ彩をしている。