溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「きゃああああ!」


周りの招待客が銃声を聞き、悲鳴を上げる。

硝煙のにおいが鼻をつき、薬莢が絨毯の上に転がる音がする。

しかし、襲ってくるはずの痛みはなかった。

おそるおそるゆっくりと振り向く。

すると、ウェイターと私たちの間にひとりの男の人がいた。


「新城……さん?」


見覚えのある背中。

彼が手に持った小さな懐中電灯が、ぽとりと床に落下した。

そして、彼自身もその場に膝をつき、どっと倒れ込んでしまう。

まさか。


「嘘……!」


まさか、新城さんが私たちを庇って……。

目の前で起きた事実に、何も考えられなくなりそうになった、そのとき。

ぱっと、広間の入口からいくつかの大きな光が入ってきた。

目がくらみそうになり、思わず手で顔を覆う。


「警察だ。テロリストは手を上げろ。一般人は動かないように」


少しかすれたようなハスキーな声が響く。

そっと目を開けると、結婚式用の大きなライトが入口に設置されていた。

たぶん、広間とは別の場所から電源を確保してきたんだろう。

その前に、声の主がいるようだけど、後光に照らされて顔がよく見えない。

彼は何人かの警察官らしき人を後ろに引き連れていた。