溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



どきりとして、思わず一歩後ずさる。

するとそんな私の様子を見て、新城さんがくすりと苦笑した。


「褒めようと思ってるのに、そんなに警戒するなよ」


だって、あまりにもじっと見つめてくるから。


「前科があるんだから仕方ないじゃないですか……」


急に自分の格好が恥ずかしくなって、うつむいた。


「そうだな。犯罪者は同じ犯罪を繰り返すって言うしな」


また一歩新城さんが踏み出す。私は思わず後ずさる。

すると、不意に背中に冷たく固い感触がした。

壁だ。

初出勤の日に、壁ドンされてプロポーズされたという衝撃の記憶が甦る。

犯罪者は、何度も同じ犯罪を繰り返す。

逃げなきゃ、と思った瞬間。

私の身体の両側に、新城さんの手が優しく伸ばされた。

その手の平はべたりと壁にくっつけられ、まるで腕で柵をされたみたい。

近すぎる距離に、胸が高鳴る。


「……綺麗だ。こんな格好であのバカ息子にエスコートされるなんて、妬けるな」


そんなの、私が望んだことじゃない。

言い返そうと思うのに、綺麗だと言われただけで喉の奥がつまったようで、何も言えなくなってしまう。

うつむいたままでいると、あごをクイと指先で持ち上げられ、無理やりに視線をあわせられた。