店員さんに言われるがままドレスを着せられ、なぜか待っていたメイクさんらしき人に化粧をされ、飾り気のないショートヘアを編みこまれてしまった。
ワイン色のドレスはベアタイプで、肩とデコルテが全部出てしまっている。
細かいシャーリングが入った生地は光沢があるのに、肌触りが良い。
胸の下の切り替え部分には、シルバーのビーズ刺繍。
まるで雪の結晶のような模様が、キラキラと光る。
足元には同じワイン色のピンヒール。
こんな格好は大学時代の謝恩会でもしたことがなくて、なんだか心もとない。
おそるおそる広いフィッティングルームを出ていくと、そこにいたのは新城さんだけで、バカ息子の姿はなかった。
「あれ……?」
「あいつなら、今自分の服着てる。大西は中で警護中」
はあ……そう言われれば、もう夕方か。自分の支度に入ってるってわけね。
ふと顔を上げると、新城さんがじっとこちらを黙って見つめていた。
何も言ってくれないから、途端に気まずくなる。
「こ……こうなったら、班長に出勤扱いにしてもらえるように頼まなきゃいけませんね。同伴したとして、こんな格好でちゃんと警護できるか謎ですけど。警棒も何も持ってないし」
視線を合わせないようにして当たり障りのない会話を探していると、新城さんが一歩動いた。



