溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「わからん!」


考えてもわかるわけがない。

ちょうど休みだし、実家に行って母を問い詰めよう。

着ていた寝間着を脱ぎ、クローゼットを開けたとき、ふと新城さんの言葉が頭をよぎる。


『今が幸せなら、それでいいじゃないか』


今が幸せなら……。

手から力が抜けていく。

確かにみんなが私に隠し事をしているような現状はもやもやするし、妙な胸騒ぎもする。

けれど、その隠し事を暴くことは、果たして本当に私のためになるの?

そして、隠したがっている母を傷つけることにならないだろうか。

このまま……何も知らないまま、今までの一ノ瀬紫苑として生活していった方がいいのかな。

そのままのろのろと、適当なTシャツとパンツを身につけ、テレビの前に戻る。

どうしようか……無理に聞きださなくても、ちょっと遊びにいくような感じで実家に……って、今のやりとりの直後じゃ無理か。ほとぼりが冷めるまで待つかな。

お腹もすいてきたし、コンビニでも行こうか……そう思った時、突然インターホンが鳴った。