溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



次の日。

非番なので目覚ましをかけなかったら、すでに昼前だった。

テレビをつけると子供向けのアニメが放映されていて、そう言えば今日は土曜だったことを思い出す。

新城さんは、ちゃんと朝食を食べただろうか。

明け方からまた警護だって言ってたっけ?


「って、別に関係ない!」


怖い怖い。どうして私、休みの日まで新城さんのことを考えているの?

私はこんなに気持ち悪い女じゃないはずだ。

ぶるぶると頭を振っていると、バッグの中から鈍い振動音が聞こえた。

のっそり立ち上がってスマホを見ると、母から着信が。

実家で何かあったのか?


「はい」

『もしもし、紫苑?』


受話器の向こうから聞こえる母の声は、いつものように元気ハツラツではないように思える。

少し、沈んでいるような……。


「葵に聞いた?赤ちゃんの頃の写真、なかったんだけど……もしかしてなくしちゃったの?」


努めて明るい声で聞くと、母は沈んだままの声音で、逆にこちらに質問してきた。


『どうして突然写真なんて探そうと思ったの?』

「うん?職場の人に、小さいころどんな子だったって聞かれて……そんな小さいころの記憶ないから、ちょっと見てみようと思っただけで」

『そう。それ以上に深い意味はないのね?』