溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



午後1時。


国会議事堂に到着すると、特殊班の先輩たちが議場の前で集まり、なにやら話し込んでいるようだ。

大男たちが輪になって話している様子は遠くから見ても異常で、一瞬近づこうかどうか迷った。

けれど、仕方ない。このまま傍観していて、欠勤扱いになったら困る。


「なにしてるんですか」


挨拶の代わりに聞くと、こちらに背を向けていた大西さんが、ぱっと振り向いた。


「あっ紫苑ちゃんおはよ!体調は大丈夫?」


どうやら高浜さんによって、私は本当に体調不良で帰ったことになっているらしい。


「大丈夫です。それより、今皆さんは何を?」

「あー、そうそう。国会が終わった後のシフトをね、話し合いで決めようと思ってたんだけど」


シフトを話し合いで?


「あのバカ息子、昨夜のうちにホテルに移ったんだけど、部屋のグレードがどうの、朝食の味噌汁の味がどうの、車の乗り心地がどうの、うっせえったらねえんだよ。誰もあいつが起きているうちに警護につきたくないから、こうして深夜シフトを取りあっているわけだ」


矢作さんが悪気のない顔で教えてくれた。

なるほど……国分議員が寝てからの警護は夜遅くて大変だけど、直接話をしたりしなくていいからか。

たしかにあの人はバカ息子というあだ名が相応しいし、あまりお近づきになりたくないタイプなのは私も認める。