溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



『ぐう……』


国分親子はまだ何か言いたそうだったけど、なんとかうなずいて玄関から出ていった。

私はそのあとに、キッチンに置いてある塩を持ってきて、ありったけ撒いた。


『祓いたまえ、清めたまえー!』


無神論者のくせにそんな文言をでたらめに唱え、自己流の御祓いをした。


『はあ』


結局、撒いた塩を掃除機で吸引し、一休みする。

ふと目が留まったのは、日用品を収納しているラックの上の写真立て。

シンプルなデザインのそれは、新城さんがくれたもの。

中に入っているのは、幼い私と実の両親で写っている写真だった。

彼が実家を探って、一緒に写っているものが一枚だけ残っていたと、プレゼントしてくれたのだ。


『……ごめんね。私には、復讐なんてできそうにないよ』


座って足をだらしなく伸ばした状態で、両親に向かって呟いた。

写真の中の両親は、もちろん返事なんてしない。


だけどきっと天国で、『それでいいよ』と笑ってくれている。

そんな気がした。