溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



小学校を卒業し、中学、高校と年齢があがるにつれ、俺の毎日は勉強に、部活に、友達付き合いに、と普通の人と同じように忙しいものになっていった。


記憶を読む能力は、特に俺に不都合を押し付けたりはしなかった。

それはほとんど、俺が強く望まないかぎり発動しなかったし、特に誰かの記憶を読みたいなどとも思わなかったからだ。

恐ろしい殺し屋に狙われれることも、自宅にいたずら電話がかかってくることさえ、なかった。

事件は世間のなかで、確実に風化していく。

ただ俺だけは、既に取り壊されてしまった本庄家の跡地にできた駐車場を見るたび、あの地獄絵図のような惨劇を思い出さないわけにはいかなかった。

いつか必ず、あの事件の真実を自分で取り戻してみせる。

そう決心していた俺は、警察学校に入学し、他の部署の仕事を経てSPになった。