溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



SPの発砲は、原則禁止されている。

けれど、簡単に手出しを出せない、しかも仲間が不利なこの状況では、射撃も致し方ないのかもしれない。しかし。


「矢作っ、撃つなよ!」


こちらを一瞬横目で見た新城さんが、そう叫んだまま地を蹴った。

高く舞い上がった彼は、男の頭に警棒を打ち込む。男の刀が動く。相手の額の上で交差した武器。


「ふんっ」


低い唸り声のようなものが聞こえたと思うと、男が刀を斜め下に振り下ろした。

弾かれた新城さんは、床の上に転がる。


「新城さんッ!」

「来るな!」


思わず踏み出しそうになった私を、新城さんは声で封じる。

その胸に向かって刀が振り下ろされる。彼は横に転がり、反動で立ち上がった。

しかし、次の攻撃にうつる暇もなく、相手の攻撃が次から次へと繰り出される。新城さんはあっと言う間に壁際に追い詰められた。


「矢作さんっ」


私は銃を持っていない。

矢作さんを見上げると、彼はうなずいて拳銃の安全装置を外した。