溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



目の前では、どうやったのかもう一人の敵の頭を両手で持った矢作さんが、その額を相手の額に思い切り打ちつけるところだった。

ガツッと鈍い音がして、相手は背中から床に倒れた。

さ、さすがでこっぱちの矢作さん……!


「だれがでこっぱちだ!」


私の心を読んだのか、矢作さんが牙をむいたまま立ち上がった。

その瞬間、ギインと金属が激しくぶつかる音がして振り向く。

にらみあっていた新城さんと刀の男が、ついに衝突したんだ。

武器の大きさに似合わない速さで、男が刀を連続して振り下ろす。

新城さんは警棒で、それを右へ左へと払いのけた。

すると男は刀を平らにし、新城さんの首をめがけて突き出す。

新城さんはそれを、背中をそらして避けた。

鼻先をかすめるようにした刃の先が、茶色に透けた前髪をはらりと落とす。


「ちっ。マジで殺す気かよ」


矢作さんが腰のホルスターに手を伸ばす。

そこには、今まで手に取ることのなかった銃が。