溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「しょうがないじゃないですか!」


手を封じられ、足首を怪我している。しかも相手より非力な私が確実に勝てる方法は、これしかなかったのだから。


「痛そう……」


議員は倒れた男に手を合わせ、しくしくと泣いた。

もちろん、かまっている場合いじゃない。放置しておこう。

新城さんの方に向かおうとした瞬間、矢作さんが組みあっていた相手の腹に打撃を加える。

そして、背後に回り込んだ。


「おらあぁぁっ!」


振り返ると、矢作さんが敵の腰に腕を巻き付け、宙に持ちあげていた。

そのまま背中をそらし、相手の頭から勢いよく床に沈む。

「すごい」


しかし、矢作さんが態勢を立て直しているすきを突き、他の二人が襲いかかった。


「させないっ」


駆け寄り、気づいた相手がこちらに殴りかかる前に、床を蹴る。

飛びついた相手の頭を腕の中に入れ、腰に足を回し、手錠の鎖を首に食い込ませた。

少しは耐えていた相手だったが、私が一際強い力を入れると、とうとう気を失い、膝から崩れ落ちる。

一緒に転がった私は、すぐに立ち上がった。