溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「やめてくれええ」

「早くしてくれなきゃ、本当にぶつ」

「ひいい。おおい、たーすけてくれーぃ」


鼻から血を出しながら、議員は男たちに救援を要請する。

けれど六人いた男の一人は新城さんとにらみあい、ナイフを打ち落とされた一人は手を折られたのか再起不能、残った四人のうち三人はこっちを見て、すぐに矢作さんの方に視線を移した。

残り一人が、面倒臭そうな顔をしてこちらに近づいてくる。

立ち上がって議員の上からどくと、男は小さなナイフをポケットから取り出した。

と思うと、こちらに駆け寄ってくる。

一気にカタをつけようというのだろう。しかし、そうはいかない。

目の前に突き出されたナイフを、体をひねってよけた。

冷静になれ、紫苑。

よく見れば見えるはずだ。

過去に起きたことの真実はまだ明らかなっていない。

けれど、目の前で起きている現実は、涙で曇っていなければ見えるはず!