溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



私が言うより早く、別の相手ととっくみあっていた矢作さんがその腕をふりほどき、新城さんの後ろに迫った敵の後ろから飛びつく。

首に腕をからませると、そのまま後ろに引き倒す。

別の敵が殴りかかる。屈んでよけ、その伸ばされた脇の下に、強烈なパンチを食らわせる。

そんな矢作さんの奮闘の横で、木刀は軋み続け……そしてついに、パアンと音を立てて崩れた。しかし。


「あっ!」


崩れた、と思ったのは木刀の外側だけだった。

むき出しになった内側は、ぎらりと銀色に光り、波打つ刃紋が誇らしげにその刃に広がっていた。柄は木のまま残っている。


「日本刀だったのか」


一瞬そっちを見た矢作さんがうなる。

木刀の……いや、刀の男はにやりと笑った。

なにあれ。思い切り銃刀法違反じゃない。

時代劇とかで使う、刃引きしてある刀でも、人間の体に打ち下ろせばそれなりの破壊力を持つ。

けれどそれならば、木刀を模した鞘に隠しておく必要はないはず。