溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「こっちへこい! お前は最後だっ」


新城さんたちに奪還されては困ると思ったのか、未だ手を封じられている私にカッターを突き付け、壁際に移動しようとする。


「紫苑!」


新城さんの声がした。

振り返ると同時に、二人のSPと男たちが衝突した。

新城さんが警棒を片手に、木刀を持っている男に向かう。

横凪ぎに払われた警棒は、男が自分の身を守るように立てた木刀の真ん中を打つ。


──バキィッ!


暴力的な音が響く。

けれど、新城さんよりも背が高く、肩幅の広い男は両手で木刀を支えたまま、びくともしなかった。


「早く、こっちへ来い!」


ぐいぐいと手錠をした手をアホ息子に引っ張られる。


「そんな場合じゃない!」


ぶんと両手を力任せに振ると、バランスを崩したアホ息子はすてんとその場で転んだ。

新城さんの背後から、別の男がナイフを持って襲いかかる。