溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



シャキンという高い音と共に、男たちも臨戦態勢に入る。

あるものは木刀をかまえ、あるものはナックルを握っていた。

銃は持っていないのか、これほどの近接戦で撃てば仲間に被害が出ると思って出さないのか、それはわからない。


「加勢するしかないか」


矢作さんはポケットに入れていた手を出し、ぽきぽきと鳴らした。


「こ、こうなったら三人とも始末してくれっ! 報酬は十分に払う!」


いかにも金持ちの悪役風の最低なセリフを吐いたアホ息子は、私の足に巻かれていた結束バンドを、取りだしたカッターで切った。

なぜカッター? もしや、ナイフは怖くて持てなかったのか?

疑問を投げかける暇もなく、議員は私を立たせる。

そのおかげで、やっと部屋の全容が見えた。

会議室のような殺風景な広い部屋。おそらく二十畳くらい。

私を囲んでいた男たちは全部で六人いた。

……当初、私一人を始末するつもりだったにしては大勢だな。用心しすぎじゃないか?