溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「そんな……じゃあ、じゃあ、俺と親父を狙ったテロリストたちはいったい──」

「もちろん、紫苑とは無関係だ。あとは自分の胸によく聞いてみるんだな。さあ、紫苑を返せ」


新城さんが一歩前に出る。

男たちと国分議員が一歩下がる。


「返せるわけないだろ。返したら、親父や俺の立場が……」


もごもごと口の中で言い訳する議員の様子を見て、新城さんのそれまでのクールな表情が一変した。

眉がつりあがり、瞳は鋭い弓先のように、議員を射抜く。


「いい加減にしろ! お前たちは、どれだけ紫苑を傷つければ気が済むんだ!」


怒りに震えた声が、びりびりと空気まで振動させる。


「返さないと言うのなら、力ずくでも返してもらう!」


新城さんは警棒をホルスターから抜くと、勢いよく伸長させた。