「は?」
そんなことを知らない国分議員は、いきなりのファンタジーな発言に首をかしげる。
「とにかく、お前たちは紫苑が忘れていたことを、むりやり思い出させた。自分の罪を自分で洗いざらい話したようなものだ」
「まさか」
国分議員の顔が青くなっていく。
「バカでも議員なんだから一応は知ってるよな。2010年に殺人の時効は撤廃された。おとなしく自首して、罪を償え」
「な……その場合、そっちだって訴えられるぞ。どんな手を使ったかしらないが、行方不明の娘を他人の戸籍にしたんだ。きっと違法行為に違いない」
議員の声は震えていた。
そういえば、『本庄ひかり』が『一ノ瀬紫苑』になったいきさつを、私は知らない。
「まあな。それについても調べたが、そっちの罪は殺人とは違う。すでに時効は成立している」
新城さんは淡々と述べた。
どうやら、そっちの事情についても、新城さんはすでに調査済みらしい。けれど、議員の前で話すつもりはないようだ。



