「あんたの父親は、あのパーティーで、私が元秘書の娘じゃないかって気づいたのね」
あのとき国分外務大臣は、私の顔を見て一気に態度を変えた。
「だから、あなたたちの警護から外した。怪我をしているところを襲わせて殺そうとしたけど、新城さんのおかげで私は生き延びた」
きっとあの頃から、この親子は私が復讐のためにSPになって近づいたのだと推測していたのだろう。
そして明日はいよいよ、テロリストが動くと予想された国分外務大臣の重要な海外VIPとの会談の日。
それまでに決着をつけたかったのか。
「お前らには悪いけど、紫苑は本当に記憶を失っていたんだ。彼女は、幼なじみだった俺の名前を聞いても、何も思い出せなかった」
「演技じゃないのか」
「いや」
矢作さんが口を挟む。
「俺は人の心が読めるが、一ノ瀬が記憶を失った演技をしていたり、復讐を考えていたりということはないようだ」
そういえば、矢作さんは人の心を読む特殊な能力があったはず。



