ずきずきと痛む頭で国分議員の声を聞きながら、私は今朝の三田さんの言葉を思い出していた。
『信じてください。私は決して、あなたの敵ではないのです。あなたの敵は、別にいます』
『あなたのために申し上げます。国分議員の事件が解決するまでは、決して外出なさらぬよう──』
三田さんは、国分議員が私を狙っていることを知っていたのか。
「さて、無駄話はここまでだ。さっそく、お前の仲間のことを話してもらおう」
「待って。私、仲間なんていない」
私の名前は一ノ瀬紫苑。
二十五歳で、女で、SP。テロリストなんかじゃない。
「本当のことを話さなければ拷問だって言っただろ?」
国分議員が手を離すと、頭が重力に負けて床に落ちた。
議員がすっとあとずさると、代わりにスーツの屈強な男たちが私を囲む。
その瞬間、部屋の中に灰色のグラデーションがかかっていくようにして、視界が暗くなった。
日が落ちたのか。それとも、雲がかかったのか。
そう思った瞬間、ぼんやりする頭の片隅に、ちかちかと光る線香花火のように、何かが閃く。



