溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「お母さん……?」

「あ……驚かせてごめんね。葵があまりに情けないものだから、つい」


そ、そうか。

ほっと息をついた途端、テーブルに置いておいたスマホのバイブ音が鳴った。

新城さんかもしれない。

さっとそれを取ると、それは期待したメールの返事ではなく、非通知設定からの着信だった。

不審に思い、電話に出ることをためらう。

いつもなら無視してしまうけど、今回はなぜか、胸騒ぎがする。

決心し、画面をスワイプする。


「はい」


短く言うと、向こうから聞き覚えのある声がした。


『もしもし、紫苑ちゃん?』


この少しカンに触る声は……国分議員?


「どうしました」


私はあなたのお父様に警護の担当を外されたはずだけど。

そう言ってやろうかと思ったけど、そんな場合ではないような気がしてやめた。