「ねえ、紫苑。こんな風に体調を崩すなんてこと、機動隊の頃はなかったじゃない」
「うん」
「SPの仕事は、そんなにつらいの?」
「ん……」
口に入れていたチャーハンを咀嚼し飲み込む。
母の顔からは、いつの間にか微笑みが消えていた。
「……ううん、辛いとは思わなかった。テロリストと直接対決するときは、たしかに緊張するけど」
国分議員の人格のせいで、面倒だなとか、迷惑だなとか思ったことはあるけど、辛いと思ったことはない。
むしろ、はっきりした理由もなく警護から外されてしまったことの方が辛かった。
「先輩がいるの」
「先輩?」
「SPの先輩。同じ巡査部長だけど、三つ年上で、よく面倒をみてくれる人がいるの」
私はSPになってから見た、新城さんの様々な表情を思い出していた。
突然プロポーズしてきたり、不意打ちでキスしたり。
テロリストから守ってくれたり、お姫様抱っこしてくれたり、大丈夫だよと抱きしめてくれたり。



