溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「あら、あの人どうしたんでしょ……」

「いやよ奥さん。見ないふりしましょ」


そんな会話が聞こえてきて、そちらを振り向く。

するとそこにいた初老の主婦二人組は、私から視線を外し、逃げるようにその場を立ち去った。

なによ、人が裸足なのがそんなに珍しいの?

そう思って自分の格好を再確認。


高校時代の緑のジャージの上下に、裸足。

しかも寝起きで髪はボサボサ、電柱につかまって降りたせいで、ジャージの腕の部分と内股の部分が摩擦熱でちょっとだけ溶けてしまい、肌が見えてしまっている。


こ、これはいけない……っ!


私は腕を組んでジャージの胸の名前の刺繍を隠しながら、超内股で自宅への道を帰ることになったのだった。