溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



住宅街を走り抜けると、人気の少ない空き地の近くに車が止めてあった。

三田さんがそれに乗り込み、ドアを閉めようとしている。


「待って! 待ちなさいっ」


怪我をした足が痛い。

けれど私は必死で車を追いかけ、閉ざされたドアの窓を叩いた。

運転席では三田さんがぎょっとした顔をしている。


「降りなさい! どうして私の部屋を見上げていたのか、説明しなさいっ」


大声を上げると、三田さんは弱り切った様子で、少しだけパワーウィンドウを開けた。


「ごめんなさい、今は何も言えないんです。ごめんなさい」

「謝罪は要らないわ。降りてきて、説明して。じゃないと、迷惑条例違反で逮捕しますよ!」


バンバンと窓を叩くと、三田さんは両手を合わせて拝むように言った。


「信じてください。私は決して、あなたの敵ではないのです。あなたの敵は、別にいます」

「なんですって?」

「あなたのために申し上げます。国分議員の事件が解決するまでは、決して外出なさらぬよう──」