溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



最近ではどきりとしてしまうそんな仕草も、私の震えを抑えることはできなかった。

暗くて狭い密室。

壁や天井が少しずつ私に迫り、押しつぶしてくるような気がして、私はその場にしゃがみこんだ。


「紫苑っ」


体が震える。

知っている。私はこの感じを知っている。

閉ざされた狭い場所で、ひたすら明るい場所に出られるように願う。

体が震えて、声が出ない。吹き出した冷汗が、じっとりと背中を濡らす。

地面にぽっかりと深い穴があいて、自分がその中に落ちていくような、あるいは誰かがそこに引きずり込もうとしているような、不吉な引力に体が引っ張られる。


「しんしろ、さん……」


必死で顔を上げ、そこにいるはずの新城さんを呼ぶ。

しかし、そこにいたのは……。


「……だ、れ……?」


新城さんじゃない。

そこにいたのは、十歳前後と見られる、美しい少女だった。

茶色っぽい髪に、長いまつ毛。まだ子供だというのに、既にほぼ完成されたようなくっきりとした顔立ちをしている。

彼女はにらむように、まっすぐにこちらを見つめていた。