溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



薄暗い個室の中で、新城さんが非常用インターホンで外部と連絡を取る。


「はい。では、よろしく」


閉じ込められた人数を伝え、新城さんは通話を終えた。


「なんですって?」

「病院は停電していないから、故障ではないかと言っていた。一時間以内には出してくれるそうだ」


だんだんと目が慣れてはきたけど、新城さんがどんな表情をしているのか、その詳細まではわからない。


「もしもし? 班長すみません。ちょっと病院でトラブルが……」


彼がスマホを取り出し、班長に連絡をとりだす。

私はそれを見ながら、次第に室内の空気が薄くなっていくのを感じていた。

息が苦しい。どうして? 密室に閉じ込められたとはいえ、そんなにすぐに酸素がなくなるなんてありえない。

それに、すごく寒い。

かたかたと体が震えだし、普段は開けっ放しにしているスーツの前のボタンを閉じようとする。

なのに、指が震えてなかなかうまくいかない。


「おい」


新城さんの声が、やけに遠くから聞こえるような気がした。


「大丈夫か?」


電話を終えたのか、新城さんはもうスマホを持っていなかった。

私に近づいて、至近距離で顔をのぞきこむ。