「そんな顔って……」
私がいったい、どんな顔をしていたと言うの?
首をかしげると、新城さんはにっと笑い、エレベーターのボタンを押した。
「俺が声をかけた瞬間、すごく嬉しそうな顔した」
「うそ!」
「もしかして、お前が俺に会いに来てくれたんじゃないかと思ったよ。勘違いだったけど」
私は言葉を失ってしまった。
まさか、そんな風に見られていたなんて。
しかも、半分は勘違いじゃないし……なんだか恥ずかしい。
ポーンと音がして、エレベーターが到着した。開いたドアの中には、誰も乗っていなかった。
新城さんの後について乗り込み、ドアを閉じた。二人きりの空間で、微妙な沈黙が漂う。
そうだ、実家に現れた不審者のことを聞いてもらおうか。そう思って口を開きかけたとき。
「あれっ」
不意に視界が暗くなった。真っ暗というわけではないけど、点灯している照明が小さな電球一つだけになっている。
「どうしたんでしょう」
「停電か、故障か……ちょっと待ってろ」
病院は地震などで停電した時のために、非常用電源を確保しているはず。
その電機は医療機器や手術の方に優先的に使われるようになっているのか、単にエレベーターの故障か。



