溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



綺麗に編み込まれた髪に、ふわふわのスカート。私のことは、完全無視。そんな彼女を追いかけ、母親がやってくる。


「ああ、よく言われるよ」


何その返し。余裕の表情で微笑む新城さんに、ココちゃんは。


「大好きよ。結婚してあげる」


な、なんと……!! 

思わずのけぞると、母親が彼女の口を押えた。


「すみません。ココちゃん、行くわよ」


恥ずかしそうに頭を下げる母親。お気持ち、お察しします。

でもその素直さが少しうらやましい。

私ももっと子供だったら、もっと素直になれたのかな。


新城さんは微笑んだまま手を振ると、歩き出した。

慌ててついていくと、新城さんが振り返りながらたずねる。


「お前、何科にかかるんだっけ」

「あ、脳外科です」

「時間あるの?」

「たぶん。まだこの番号まで、三十人くらいいたかと」


番号札を見せると、新城さんはうなずいた。


「じゃあ、一階に喫茶店があるから、行こうか」

「えっ。警護に戻らなくていいんですか?」

「少しなら時間がある。そんな顔されたら、ここでバイバイなんてできないだろ」


新城さんは速度をゆるめ、エレベーターの方へ向かっていく。