溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「ああ、大丈夫。ちょっと縫ったところが引き攣れるような感覚があったから、念のため」

「そうなんですか」


良かった。傷が開いてしまったわけではないみたい。


「でも、顔色が少し悪いですね」


連日の警護で疲れているのもあるのだろうけど、それとは少し違うような……何か心痛を抱えているような顔に見える。

新城さんは私の発言にハッとしたように目を見開く。けれどそれはほんの一瞬で、すぐににっと笑った。


「そんなの見てんじゃねえよ、バーカ」


そう言って、大きな手で頭をなでる。黙ってされるがままにしていると……。


「ねえママ、あの人たちいちゃいちゃしてるよー」

「これ、ココちゃん!」


そんな親子連れの声が聞こえて、新城さんの手が離れていった。

いちゃいちゃって、もしかして今の私たちのこと?


「ははっ、言われちまったな」


吹き出す新城さんに、いちゃいちゃと言ったらしい5歳くらいの女の子が近づいてきた。


「お兄ちゃん、かっこいいのね」


あら……この子、既に恥ずかしそうに上目遣いでくねくねしてる。二十五歳の私より、女子力が高い……。