溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



病院の受付で症状を話すと、一応脳外科に行ってみてはどうかとすすめられ、その通りにした。

番号札を持ってエスカレーターに乗り、三階にある脳外科のカウンターで再度受付を済ませると、予約の患者がいるので、私の診察はその後になるという。

ちらっとのぞいた待合室は既にいっぱい。これは時間がかかりそうだ。

私は受付に声をかけ、その場を離れた。

もちろん、外科にいるであろう新城さんを探すため。

もしかしたら入れ違いになっているかもしれないけど、どうせ暇なんだから院内をぐるっと回ってみよう。


「何をそんなに慌てていたんだか……」


メールでも電話でも、まだ病院にいるかどうか聞いてみれば良かったのに。

今からでもそうしてみれば良いと頭では思っているのに、なかなかバッグの中のスマホを取りだせない。

だって、そんなの、『会いたい』って言っているようなものじゃない。そう思われたら、格好悪いじゃない。

理想はそう、偶然を装って、一度気づかないふりですれ違う。そこで新城さんの方から声をかけてもらうんだ。