『さっき、庭でぽとんって変な音がしたような気がして、外に出てみたの。そうしたら、塀の向こうから、若い男がこちらをのぞいていたのよ』
「はっ!?」
それって、誰かが実家をのぞいていて、母はその不審者と目があってしまったってこと?
「それで?」
『相手は塀の向こうに隠れるようにして、すぐ見えなくなったわ。でも、遠くに行ったところを見たわけじゃないから、どこにいるかわからない。怖くて外に出られないの。まだ変な家の周りにいたらどうしようと思って』
そりゃあそうだ。さっと身を隠して、まだそのあたりにいる可能性はある。
「けど、きっと顔を見られたと思って一旦は逃げたはず。そのまま施錠をしっかりして、誰かが帰ってくるのを待って。通報はしたの?」
『してない。だって、家に警察が来たのをご近所の人に見られたら、気まずいじゃないの!』
たしかに、近所の家の前にパトカーが停まっていたりしたら、誰もが何があったんだろうと思うだろう。
「でも、そんな場合じゃないでしょう」
『どうせ警察なんて、この程度じゃ何もしてくれないわよ』



