肉食獣が獲物を探すように、じっと息をひそめて近づいてくる者たちの息遣いが聞こえる。
それを察知した途端、新城さんが立ち上がる。
彼が持っていたプラスチックのカップが、円を描き、飲み物をまき散らしながら転がった。足元に黒いシミが広がっていく。
捻挫している足に力を入れないように気をつけながら、自分も立ち上がる。
すると、ベンチから六メートルほど前方にあった茂みから、がさりと音を立て、ふたりの人影が出現した。
「後ろにもいる」
新城さんが言うので、素早く振り返る。すると、後方の並木道の向こうからも、二人の人間が近づいてくるのが見えた。
「こいつら、プロだな」
これだけ近づかれていたことに、気づくことができなかった。
つまり彼らは、気配を消す訓練をしたテロリストか何かだということだろう。
いったい彼らは何者? 何が目的で私たちの前に現れたの?
私たちは政治家じゃない。重要事件の目撃者でもない。ただのSPなのに。



