溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「そんなにへこむなよ。俺たちだって、怪我で宣戦離脱することなんてしょっちゅうだし。高浜さんなんて腹刺されて、一か月くらい休んでたな」

「怪我は、もう仕方がないと思っています。私が納得できないのは、国分外務大臣の圧力です」


こんなことがあっていいわけがない。

同意してほしくて新城さんの横顔を見る。けれど彼は、じっと空中をにらむようにして、黙っていた。


「新城さん?」

「あ……ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」


本当に? 何かが胸の奥で引っかかって、じっと新城さんを見つめる。

もしかして、私が警護から外された本当の理由に心当たりがあるんじゃあ……。


「あの……」


聞きなおそうとすると、新城さんはそっと私の口を手のひらで覆う。

その動きは静かで早すぎて、一瞬何が起こったかわからなかった。


「静かにしろ」


新城さんは鋭い視線で周囲を見回す。手を離された私も、静かに視線を動かした。

平日昼間の公園は静かで、人気がない。近くには私たちしかいない。

そう見えるのに、どこかから人の気配がするような……。