溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「そんなの……」


そんなものより、私はこのサンドイッチの方が、よっぽど嬉しいです。

素直に言うことはできなくて、ただ首を横に振る。


「それにしても、昼間見ると余計に痛々しいな」


夏の公園はやっぱり日差しが強くて熱いけれど、日陰で風を感じるのは気持ちよかった。

新城さんは私の頬に貼られた湿布を、指ですっとなでる。


「すぐによくなりますよ」


平静を装うけれど、触れられた頬がすでに熱くなっていた。


「だから、SPなんて辞めろって言うんだ。このままだと、いつか一生消えない傷がつく」


SPを辞めろ、か。


「辞めた方がいいのかな……」


ため息交じりに出た言葉に、サンドイッチの包装を開けようとしていた新城さんの手が止まる。


「落ち込んでるとは思ったけど……何があったんだよ?」


とにかく食べろと言い、新城さんは私の膝の上の袋からサンドイッチをとりだすと、強引に押し付けてくる。

仕方なくそれを受け取ると、レタスの緑と卵の黄色、トマトの赤が意外に綺麗で食欲をそそった。

私は少しずつそれを口に入れ、飲み込んだタイミングで、国分議員の警護から外されたことを新城さんに話す。

話を聞き終えた新城さんは、「そうか」と短くうなずいた。