溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



「はじめまして。高浜さんにはいつもお世話になっております。新人の一ノ瀬です」

「い、いえいえいえ!こちらこそ!」


挨拶をすると、小さなその人は顔を赤くしてぺこりとおじぎした。


「こいつは中園麻耶。そのうち高浜麻耶になるだろうな。元マルタイの、売れないネット小説家兼、篠田の下僕」

「う、売れないは余計だい!あと、下僕じゃないもん!」


……情報が多すぎて、整理に時間がかかるな。

元マルタイって、もしや以前話していた『高浜さんがマルタイに手を出した件』の彼女か?

なんだ、ちゃんとつきあっているのか。ならば問題ないじゃない。

しかも篠田さんの下僕ってことは、篠田さんの下で働いているんだろう。


「それにしても……やっぱりSPって、容姿端麗じゃなきゃダメなんだねえ……」


中園さんは頬を染めたまま、うっとりした顔でこちらを見ている。


「紫苑、麻耶がお前に見惚れてるぞ」

「は?え?」


SPの条件にある『容姿端麗』っていうのは、『身だしなみがきちっとしている』という意味もあるから、SPが全員美男美女なわけじゃない。

私はどっちかというと猫みたいなつり目で、美人なんかじゃないと思う。

というわけで、見とれられる理由がわからない。