溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】



庁舎の外に出ると、むわりとした夏の重い空気に押しつぶされそうになる。

どこか涼しくて静かなところで、気分転換したい。

とはいえ、ランチ時の飲食店はどこも混んでいるだろうなあ……。

進行方向を決めかねてため息をついたときだった。


「……あれ?」


ぼんやりと見た前方に、見覚えのある人影が。

茶髪で背が高く、実際についている筋肉のわりにはすらりとして見える、あれは……新城さん。

と、その横にいるのは……誰だ?

子供みたいに見えるけど、たぶん背の小さい大人だろう。

私より少し長い髪に、マカロンカラーのヘアクリップをつけた、メガネの女の子。

胸の奥に少しの波が立つ。

親しげに話しているけど……。

気づけば、私はそちらに歩みだしていた。

気になることは、単刀直入に聞けばいい。

乙女じゃないんだから、電柱に隠れてそっと様子をうかがうなんて、私らしくない。

足音に気づいたのか、先に新城さんがこちらを向いた。