「あんたが勝手に怪我や殉職するのは勝手だが、マルタイまで巻き込む気か?」
「それは……!」
「今後二度と現場に出られないわけじゃない。ただ今回の事件では、裏方に徹していろ」
篠田さんは言いたいことを一方的に言うと、挨拶もせずにさっさと部屋を出ていってしまった。
残された私は、机に手をついて立ったまま、唇をかみしめる。
篠田さんの言うことは正しい。正しすぎて、反論できない。
私の仕事は自分の手柄を立てることじゃなく、マルタイを危険から守ることだ。
こんな足では、現場に出られなくて当然。
だけど、どうして?
どうして、あの場にバカ息子と一緒にいただけで、担当から外されなきゃいけないの?
どうして私は国分外務大臣に、ここまで嫌われたんだろう。
ぐっと拳を握りしめた時、庁内のチャイムが鳴った。
時計を見ると、ちょうど正午。昼休憩の時間だ。
「外に出てきます」
それだけ言うと、カバンをつかんで松葉杖をつき、なんとか片手でドアを開けた。
それを閉める瞬間、心配そうな班長の顔が見えた気がした。



