演技だったのかな、あれ? 陸とのあの事を思い出していた。 どっちにしろいいのだけれど、それよりも。 私は隠すように丸めていた右手をゆっくりと開いた。 結構血だらけになっている。 まさか、リンゴに刃が仕込んであるなんて思いもしなかった。 あの時、一瞬だけでも顔をしかめたものだから気づかれていないかと心配だったけれど客席からは見えなかったらしい。 洗いに行こう。 私は、舞台をこっそり抜け、トイレへと向かった。