「どうして、とは聞かないのか?」
タオルを渡してくれながら船長が聞いてくる。
「聞いたら答えてくれるんですか」
「答えられることなら、だけどな」
ぐいぐいとタオルで顔を拭う。
「どうせ温暖化とか言うんでしょう?」
「そうだ。気温が10年前と比べて5度上がっているんだ。どうして水温が上がらないなんて言える?」
「だからって…たかが5度なのに」
そこで船長はバケツに入っている魚をつかんだ。
あっと息を呑む。
「結輝がダイビングをするようになって始めに言ったはずだ。
魚の体温は水温と変わらない。ここで言うなら20度前後だ。そして俺は体温が高くて37度ある。その差は17度もあるんだ。俺がこの体温のまま魚を触ったなら、魚は火傷をしてしまう。はっきりと目に見える程焼けただれてしまう訳でなくても、魚は弱ってしまう。
温かい手のまま魚に触れるなというのは、寿司職人や料理人だって知ってる」



