それだけ沙那さんが大切なんだろう。そこは負けていないと思うのに、沙那さんの隣へ踏み出す勇気がまだなかった。
屈み込んで片膝をついた御山さんが、左胸のポケットから、ベルベットの小箱を取り出して沙那さんへ差し出した。
「沙那は自分の店を取るか、両親の店を守るか悩んでいたんだろう? 俺を選んで。俺が沙那の両親の店を守っていくよ」
驚きに見開いた沙那さんの目から、はらはらと大粒の涙がこぼれ落ちる。
「俺にしときな。一生後悔させない」
「……ありがとう。私の大切な店を守って……」
沙那さんの手がベルベットの小箱に伸ばされる。箱に重ねられた手を、御山さんの大きな手が包みこんだ。



