「本気なの、お父さま」


飲み物を落としたことすら気にならないくらい、動揺している。落とした缶を拾いあげてテーブルに置く。


「沙那の人生は自分で決めていいのだよ。押し付けられて辛かったろう。随分反発されたからね。無理に沙那に継いでもらわなくても、会社には優秀な人材だっているのだから心配しないでいい」


「隆晃おじ様? それとも松橋さん? どちらも社員のことを本気で心配していないし、経営を任せられないっておっしゃったわ」


父親のスーツにしがみつくように訴えている。それに対して沙那さんを安心させるかのように、お父さんはうっすらと笑みを浮かべている。


「いざとなったら、優秀な人材を引き抜いたっていいんだ。沙那は心配しないでいい」


沙那さんを落ち着かせるように、背中を撫でる。きっと子供の頃から何度もしてきた仕草なんだろうけれど、親子の強い絆を感じる。

お互いに対する深い愛情も。



「だって、お父さまはあんなにわたしがヤキモチを焼くくらい、会社や社員を大切にしていたじゃない」