慣れているらしく、入口をくぐるとエレベーターの上昇ボタンを押して、到着するのを待っている。慌てて追いついて顔を覗きこんだ。

「沙那さん、誰のお見舞いなんですか? 」


「騙すみたいに連れてきてゴメンなさい。結輝にあってもらいたいのは、ここに入院してる母親なの」


びっくりして声が出ないでいると、さらに沙那さんが言いつのる。


「結輝はあたしと付き合ってるんでしょう。だから別に家族に紹介したって大丈夫よね? いつまでも結婚しないでいるから、安心させてあげたいのよ」

「……そういうことなら。ただ、事前に言ってもらえたなら、もっときちんと出来たのに」


言ってもらえたなら、はき古したジーンズとくたびれたシャツでなく、もう少しまともな服でこれたし、初対面のお母さんに手土産のひとつも用意できた。