「改めまして。
あたしは久我山美海。

久我山財閥現在の社長であり、あたしのお父様が立ち上げた、『いじめ防止委員会』の会員よ」




あたしの正体を知ってしまっていた妙子は、さほど驚いた様子がなかった。





「地味だと思っていたけど、まさかあの久我山財閥のお嬢様とはね」

「久我山の令嬢だと知られないように、こうして地味な格好をしていたのよ。
佐山さん、よくホームページの写真でわかったわね」




普段化粧をしないあたしだけど、ホームページに載せる写真を撮影するときは、プロのスタイリストやメイクアップアーティストにお願いして、化粧を施してもらった。

自分でも驚くほどの変わりようで、あたしが幼い時から知っている村瀬でさえも、誰だかわからなかったほどだ。




「化粧をして顔を変えていたにしても、クラスメイトだからね」




…凄いな、妙子は。




「橘さんは?
あたしのこと、知っているの?」

「ええ。
里沙だけにしか言っていないけどね」

「…佐山さんと橘さんって、仲良いわよね」

「そうね」




ふっと笑った妙子は、あたしを見た。






「妙子、で良いわよ。
里沙も、里沙で良いと思うわ。
あの子は、上の名前で呼ばれるの、あんまり好きじゃないから」





その笑顔は、

初めて妙子たちがあたしへ話しかけてきてくれた笑顔と、

一緒だった。