何も言えないで、ただ驚くだけのあたしを見て、妙子はふっと笑った。




「聞いたのよ、昨日ね。

校長室の前を通った時、中での会話が聞こえてしまったの。
あの校長の態度は、普通じゃなかったわ。

以前、聞いたことがあったのよ。

“スクール・キラー”の正体を掴むために、久我山財閥が発案した極秘の委員会があること。
委員会の内容は、“スクール・キラー”を探すこと。
自分の学校に“スクール・キラー”が在籍していたら大変だから、数々の学校の校長が、その委員会の会員だと言うことを。

この学校の校長も、会員だと言うことも。

校長の態度を聞いて、あたしは直感したわ。
久我さんが、その委員会の調査委員会かもしれないってことを。

教室に帰って、久我山財閥のホームページを見て、驚いたわ。
次期社長として、今のように地味な格好をしていないアナタが写っていたんだもの。

アナタは、
久我山財閥の次期社長にして、
発起人の娘で、
委員会の人間ってことも、全てお見通しよ」






全部…全部、合っていた。

あたしの隠してきた身分も、地味子の目的も。





「…素晴らしいわ、佐山さん。
アナタのその調査能力、是非我が委員会に欲しいわね」




あたしは前髪だけのウィッグを外した。

長くて鬱陶しい黒髪も、制服の袖で隠していたゴムで結ぶ。

制服のスカートの長さは、後々戻すのが面倒だから長いままだけど。

…家での、久我山美海としての格好になった。