あたしは涙を両手で拭くと、自分の前髪をかき上げた。

地味子になるために必要だった、作った前髪。

…今はその前髪なしで、言いたいんだ。





「今までありがとう真宮くん。
あたしの力になってくれて。

真宮くんがいてくれたから、あたしは強くなれたんだよ。

……大好き、でした」





前髪を下したあたしは、何故か吃驚顔の真宮くんに背を向け、走り出した。

だけどその腕が、ガシッと力強く掴まれる。





「未美子ちゃん待って!」




えっ…?

未美子…ちゃん?




いつも、ミミちゃんだったのに。

ウサギみたいだって笑ったあだ名だったのに。






「未美子ちゃん、不思議に思わなかった!?
どうして僕、好きな人いるのに、未美子ちゃんの傍にいるのか!」





…確かに、そうだ。

普通、好きな人の傍にいたいと思うはずなのに。






ずっと彼は、あたしの傍に居てくれた……。