里沙は、大して可愛くもないし美人でもないし、成績が優秀ってわけでもない。

あんまり取り柄がないように見える上、あの特徴ある間延び口調だ。

…本当は、里沙がいじめられても、可笑しくない。

里沙は、そんな危ない立ち位置なのだ。




それがこのクラスで上位の位置にいられるのは。

里沙本人も言っていたけど、私がいるから。




私は里沙に同情して、一緒にいるのではない。

私は友達として、里沙のことが好きなのだ。

卒業しても大人になっても、別れたくないと思う、大事な親友。

里沙が私をどう思っているのかは知らないけど。

私は見返りを求めず、無条件に里沙を信頼していた。




里沙が危険な橋を渡るのなら。

私も一緒に渡って良いと思っている。

例えそれが、今にも落ちてしまいそうな橋でも。




里沙も、少しはそう思っているはずだ。

―――だから、“こんなこと”が出来るのだ。

“こんなこと”が出来るのは、私が危ない橋を渡っていて、それに里沙も一緒に渡っているから。

最後まで渡るのか、途中で折り返すのか、それはわからないけど。





「……フフフッ」




今まで黙って“作業”をしていた里沙が、笑みを漏らした。

それにつられるように、私も一緒に笑った。