一気に静かになる、教室。

あたしを見る、皆の目。

死んだ魚のように濁った瞳が、あたしを射抜くように見る。

あたしは気にしない振りをして、自分の席へ向かう。




あたしの席は、廊下側の1番後ろ。

まるでクラスメイトの席から隔離されたような、離れた場所にある。

机の上には、枯れた花の花瓶が無造作に置かれていた。





花瓶が邪魔で鞄が置けないから、あたしは花瓶を持って教卓へ向かう。

机の合間を縫うように歩いていると、何かにけつまずいた。

“転ぶ”と思った時には、もう遅い。

あたしは花瓶を両手で持ち、鞄を肩に背負ったまま、派手に転んだ。




その瞬間教室中に響き渡る、男女の声が混じった笑い声。

あたしは悔しい気持ちを抑えながら、立ち上がってスカートについた埃を取る。

そして教卓へ向かい、花瓶を置いた。





「キャハハッ!
久我(くが)さんって、本当にドジねぇ」




やけに甲高い声が聞こえて、憂鬱な気分がますます上がったような気がした。

俯いていた顔を上げ、声の主を見る。





茶色く染め巻いた、肩までの髪。

化粧禁止のこの学校でバレないようにしている、ナチュラルメイク。

異様に短い、スカートに着崩した制服。





あたしはコイツが、

苦手だ…。