学校の校門を過ぎ、校舎までの道を歩いていると。




「ミミちゃん」




後ろから肩を叩かれながら名前を呼ばれた。

あたしをこの学校で、話しかけてくれる人は珍しい。

その上男子だから、もっと珍しい。





「おはよう、真宮くん」




真宮美弦(まみや・みつる)くん。

女子のような可愛らしい名前だけど、れっきとした男だ。

茶色の少しクセの強い髪を、自然に遊ばせていて、イケメンの分類に入る顔立ちをしている。




「ミミちゃん、毎日見ても地味だね…。
その黒髪、綺麗なんだから、結ぶとかすれば良いのに」

「あたしにはこの髪型が似合っているから…」




嘘。

本当は真宮くんの言う通り、結びたい。

この髪型、鬱陶しくてあんまり好きじゃないもの。




だけど、あたしは地味子でいなくちゃ。

アノ計画が達成されるまで、素顔を隠していないと駄目なの。




ごめんね、真宮くん。

あたしは心の中で、手を合わせた。